天体の画像を読む。地上で物質を測る。月や火星衛星の表層を、計測とモデルで理解する。宮本研究室では、探査データ・実験・数値計算を組み合わせ、惑星科学から宇宙資源の利用へと研究を進めています。

アルテミスの宇宙飛行士展開機器:LDA
アルテミス計画が目指すのは、アポロ以来、半世紀ぶりの有人月面探査です。LDA(Lunar Dielectric Analyzer:月面誘電率計測器)は、宇宙飛行士が月面に運び、設置する科学機器として開発されています。
2024年3月、NASAの世界公募による初回選定3件のひとつに採択。その3件のうち、米国外の機関が主導する唯一の機器です。東京大学を中心とする国際チームを宮本英昭(PI)が率い、小林真輝人(Deputy PI)とともに、NASAとの直接契約のもとで開発を進めています。
NASAの選定発表(2024年3月26日) ↗ / 東京大学の採択発表(2024年4月4日) ↗
LDA(Lunar Dielectric Analyzer)は、月の表層を覆う砂や岩片「レゴリス」の誘電特性を調べる計測器です。センサーを地面に接触させ、電磁波に対する物質の応答から、その状態を読み解くことを目指しています。
誘電特性は、鉱物の組成、粒子の詰まり方、温度、氷の有無などの影響を受けます。測定値を一つの原因に結びつけるのではなく、模擬試料の実験や熱の伝わり方の計算を組み合わせて、可能な解釈を絞り込みます。着陸機の影に伴う温度変化を利用した繰り返し観測も検討しています。

計測・実験・モデルをつなぐ
- 地表に接触させる共振器とアンテナによる計測手法の検討。
- 組成・密度・温度を変えた試料の室内測定。
- 表層の加熱・冷却を計算し、現地観測を解釈するための準備。
LDAの計測計画・機器設計(LPSC 2026) ↗ / 宇宙飛行士による設置・運用計画(LPSC 2026) ↗
月面資源開発を率いる:SX研究開発拠点
宮本英昭は、宇宙戦略基金SX研究開発拠点「月面開発のための宇宙資源開発拠点」の研究代表者(PI)を務めています。東京大学を代表機関とし、共通環境整備費を含む拠点全体の支援上限額は31.8億円です。
※今後、ステージゲート審査等により変動し得ます。
資源の探査から収集・抽出・貯蔵・利用までをつなぐ技術実証に取り組み、大学・研究機関・企業の連携と人材育成を進めています。
共通環境整備費による「低重力環境・共有実証基盤の整備」も追加支援の対象に選定されています。
SX拠点始動の東京大学発表 ↗ / JAXA採択事業紹介 ↗ / 共通環境整備費の追加支援結果(JAXA) ↗
RESEARCH HIGHLIGHT — MMX
火星の月の起源と進化に迫る:MMX

宮本英昭は、火星衛星探査計画MMXの立ち上げメンバーとして初期構想から参画し、2015年には科学ミッションの原案を共同でまとめました。現在はMMXサイエンスボードメンバーおよびSurface Science and Geology Science subteam(SSG-SST)のPIを務めています。
フォボスとダイモスはどのように生まれ、火星を周回する環境のなかでどう変化してきたのか。探査画像による地形・地質の解析と、実験・数値計算を組み合わせ、表層の進化を読み解きます。
フォボス模擬土壌で、探査を支える
MMXの科学・工学的な検討のために、フォボス模擬土壌UTPS(University of Tokyo Phobos Simulant)を開発しました。粒子の性質や光の反射などを地上で調べ、着陸・試料採取の検討や観測データの解釈につなげています。
研究室の学生もMMXの研究に参加しています。教員・研究員と学生がともに、火星衛星探査に取り組んでいます。
MMXに関する代表的な論文・解説
Miyamoto et al.(2021):フォボスの表層環境と模擬土壌UTPS ↗
Earth, Planets and Space 73, 214.
宮本英昭(2023):火星衛星は小惑星とは違う? ↗
日本惑星科学会誌「遊星人」32(4), 296–301。MMXの構想と表層科学・地質研究を紹介。
Wargnier et al.(2024、宮本共著):フォボス模擬土壌の分光測光 ↗
Icarus。含水鉱物・有機物の吸収帯の検出可能性を検討。
天体の物質を、地上で再現する
月・火星・フォボスの模擬土壌を販売・提供しています。探査機器の試験、資源利用の実験、教育・展示など、ご用途と必要量を添えてご相談ください。
月、火星、フォボスなどの表層を模した土壌「シミュラント」を用い、探査機器や資源利用の実験を行います。天体ごとの組成や粒子の特徴に加え、どの性質を再現すれば実験の問いに答えられるかを考えることが重要です。

LDAを支える研究では、斜長岩、玄武岩、イルメナイトなどの試料を用いて誘電特性を比較しています。実験の条件を管理しながら、組成や密度が観測にどう表れるかを調べます。
探査画像から、天体の歴史を読み解く
月・小惑星・火星衛星の画像に見えるクレーター、岩塊、溝などの地形を調べます。形や大きさ、空間的な分布を手がかりに、衝突や粒子の移動、表層の変化の過程を考えます。
画像解析や機械学習による特徴の抽出も研究・教育の題材です。自動で得られた結果を地質学的に読み直し、検出の得意・不得意を確かめることまで含めて、探査データを扱います。
土砂・岩石粒子を、AIで自動解析する
機械学習を用いて画像中の粒子の輪郭を識別し、粒径・形状・分布を定量化します。探査画像の解析から生まれた技術を、砕石・骨材の管理、鉱山、土木・建設、防災など地上の課題へ展開しています。
リュウグウとベヌーの画像解析では、重複を含め約350万個の岩石を識別し、重複を除いた約20万個の岩石の位置と形状を記録しました。画像解析の導入や、用途に応じた共同研究のご相談を受け付けています。
地下探査から、資源利用と社会へ
電波サウンダーや地下探査レーダーなど、表面からは見えない構造を調べる技術にも取り組みます。科学と工学の成果を、資源利用の可能性、人材育成、社会との対話につなげ、CSRIや国内外の研究機関との連携を進めています。