天体表層模擬物質(シミュラント)は地球上の岩石や鉱物を材料物質として、様々な天体の表層に存在する土壌(レゴリス)を再現したものです。宮本研究室では現在月、火星、フォボスをはじめとし、様々な天体の表層模擬物質を作製しており、興味をお持ちになった関係各社・個人・学校・団体の皆様に有償/無償で提供しています。入手ご希望の方は、info@seed.um.u-tokyo.ac.jpまでご連絡ください。

月表層模擬物質(UTLSシリーズ)

本研究室で開発した月表層模擬物質(UTLSシリーズ)は、月レゴリス中の鉱物に類似するサイズや組織をもつ物質を世界中から厳選して材料とし、月レゴリスの化学的・物理的特性を再現しています。特に、本模擬物質は多様な材料物質を精緻な最適化手法により決定された割合で混合することで、月の低緯度から極域に至るさまざまな領域の化学組成を高精度に模擬することが可能です。さらに、独自の破砕技術により月レゴリスの粒子形状を再現し、かさ密度や安息角をはじめとする機械的特性についても、月表層で想定される値と同等の範囲に収めることができます。本模擬物質は、LUPEXやTSUKIMIなどの探査ミッションの実証試験や、現地資源利用を想定した室内実験など、世界中で広く活用されています。

図1-1. (a)月の海領域を模擬したUTLS-M1、及び(b)月の高地を模擬したUTLS-H1。
図1-2. アポロ試料から推定した平均的な粒径分布(黒線)、および同分布に準拠して調整された月表層模擬物質の粒径分布(赤線)。

表1-1. 月の海を再現したUTLS-M1、および月の高地を再現したUTLS-H1の化学組成。

SiO2 (wt%)TiO2 (wt%)Al2O3 (wt%)FeO (wt%)MnO (wt%)MgO (wt%)CaO (wt%)Na2O (wt%)K2O (wt%)P2O5 (wt%)Total
UTLS-M147.71.1518.99.270.137.9710.21.900.560.0897.9
UTLS-H144.61.3225.06.610.075.3012.91.760.300.0297.9

火星表層模擬物質(UTMSシリーズ)

本研究室で開発した火星表層模擬物質(UTMSシリーズ)は、多様な材料物質を組み合わせることで、領域ごとに異なる物質を含む火星レゴリスを再現しています。着陸探査や軌道上からの観測データを駆使し、材料物質の適切な配合割合を決定することで、バリエーションに富む各領域の化学組成を正確に再現することが可能です。また、火星表層における熱物理的特性の推定結果をもとに、火星レゴリスの粒径分布も科学的に尤もらしい範囲で精緻に模擬しています。本模擬物質は、探査機搭載機器の熱物理的特性や貫入特性の評価に向けた地上試験での活用が予定されており、さらに今後進展する火星探査において国内外での幅広い利用が想定されています。

図2-1. 火星のGale crater表層の組成を再現したUTMS-G1
図2-2. 微細粒子(ダスト)含有量の異なる領域を想定して調製されたUTMS-G1の3種類の粒径分布。

表2-1. UTMS-G1の化学組成。

SiO2 (wt%)TiO2 (wt%)Al2O3 (wt%)Fe2O3 (wt%)MnO (wt%)MgO (wt%)CaO (wt%)Na2O (wt%)K2O (wt%)P2O5 (wt%)Total
UTMS-G144.91.2614.719.40.2110.78.17N/A0.560.56100.5

フォボス表層模擬物質(UTPSシリーズ)

本研究室で開発されているフォボス表層模擬物質(UTPSシリーズ)は、着陸探査が未実施で物理・化学的に未解明な点が多いフォボス表層レゴリスを、軌道上からの観測データに基づき、尤もらしく再現しています。フォボスの起源として提唱されている巨大衝突説と捕獲説に基づき、それぞれのシナリオに応じた材料物質を用い、観測データと整合する反射スペクトル特性を持つ模擬物質を作製しています。また、地上レーダー観測や軌道上からの熱慣性の観測情報に基づいて制約した粒径分布を模擬物質に反映しています。本模擬物質は、着陸探査前に得られる情報のみから作製された画期的な試料であり、火星衛星探査計画MMXにおける着陸脚、サンプラー、ローバーの実証試験をはじめ、さまざまな室内実験で使用されています。

写真, ケーキ, 羊, 敷物 が含まれている画像

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

図3-1. 捕獲説をもとにPhobos表層のレゴリスを再現したUTPS-TB。

Fig. 4

図3-2. 多様なシナリオを考慮して作製されたUTPS-TBの三種類の粒径分布(Miyamoto et al., 2021)。

Fig. 6

図3-3. PhobosのI/Fスペクトルの特徴を再現したUTPS-TBの反射スペクトル特性(Miyamoto et al., 2021)。