砕石・骨材の管理、盛り土や残土の処理、鉱山や砕石・採石場、防災といった現場では、土砂の性状を定量的に把握することが重要です。宮本研究室では、AIを用いた独自開発のアルゴリズムにより、数秒で無数の岩石粒子を自動識別し、粒度分布や粒子形状の分布を含む詳細なレポートを即時に出力するシステムの開発をすすめています。導入から運用支援まで、各現場のニーズに応じたご相談にご対応しております。ご興味をお持ちの方は info@seed.um.u-tokyo.ac.jp までお気軽にお問い合わせください。

1枚の画像から、粒子1つ1つの特徴を瞬時に抽出

私たちが開発したアルゴリズムは、矩形や楕円といった簡易的な近似ではなく、粒子の輪郭をピクセル単位で精緻に抽出し、ポリゴンとして出力します。

この方法により、粒径はもちろん、三軸比、円形度、包絡度といった粒子形状に関する情報を網羅的に把握可能です(図1)。

粒子の情報を得るという点において、これ以上の方法はなく、岩石粒子の解析の最終到達点といえます。

速く、正確に、そして徹底的に。私たちの技術は、1つのデータから土砂の状態を余すところなく抽出します。

図1. 粒子のポリゴンによる自動識別と、その結果を用いて抽出できる粒子のパラメータ。ここに挙げられているのはあくまで解析例であり、必要な機能を追加実装可能。

必要なのはカメラだけ

特別なセンサーや大型装置は一切不要です。

私たちのアルゴリズムは、撮影されたあらゆる画像から岩石粒子を高精度に識別します。画像の解像度や色調(カラー・グレースケール)は問いません。スマートフォン、ドローン、定点観測カメラなど、様々な手段で撮影された画像から、粒度・粒子形状の分布を含む詳細なレポートを自動生成できます。(図2)

クラウドやオンプレミス環境に対応し、画像をアップロードするだけで、即時に解析結果を取得可能です。撮像方法の提案から解析環境の構築まで、現場に応じて柔軟にご支援いたします。すでに大手ゼネコン様からもご相談いただいております。

また、屋外や過酷な環境下での利用も想定しています。たとえば富士山宝永火口では、暴風雨に耐える筐体に小型カメラと通信モジュールを組み込み、限られた電源・通信環境下でも安定的に運用できることを実証しました(図3)。

図2. 開発済のAIを利用した土砂自動解析システム。あらゆる画像に対応可能であり、瞬時に解析を行い、粒度分布や粒子形状分布などをまとめたレポートが出力される。
図3. 屋外用の計測システムの例。限られた電力、通信環境下でも問題なく稼働できることを実証できた。

宇宙探査で認められた、最新のアルゴリズムです

本アルゴリズムは、JAXAの小惑星探査ミッション「はやぶさ」「はやぶさ2」で浮かび上がった課題を解決するために開発されました。

岩塊に覆われた小惑星表面で、安全かつ平坦な着陸可能領域を絞り込む必要があるなか、研究者たちは寝る間を惜しんで大量の岩石を手動で解析していました。

しかし、こうした手作業には、①膨大な時間と労力、②担当者間の結果のばらつき、③同一人物であっても解析の再現性が低い、といった根本的な課題が存在します。

私たちのアルゴリズムは、これらの課題をすべて解決しました。

小惑星リュウグウおよびベヌーの画像約1万枚を解析し、累計350万個以上の岩石粒子を自動識別することに成功。人力では到底処理不可能な規模の解析を、前処理から後処理まで含めわずか2週間ほどで完了させました(図4)。

この成果は大きな反響を呼び、東京大学からのプレスリリースを通じて広く報道され、50を超えるメディアに取り上げられました(図5)。

図4. 小惑星上の岩石の自動識別結果: 350万個の岩石をAIによるアルゴリズムで自動識別。地図投影で重複を削除し、1m以上の全岩石(20万個の岩石が存在と判明)の位置と形状を把握し、粒度分布など重要な指標を得ることができた。
図5. 自動識別アルゴリズムの論文と各メディアによる報道。50以上のメディアに取り上げられ、多くの注目をいただいた。

宇宙、地上問わず様々な場面での利用が始まっています

本アルゴリズムは現在、複数の宇宙探査プロジェクトで実際に運用されています。たとえば、NASAのOSIRIS-RExミッションによって2023年に地球へ帰還した小惑星ベヌーのサンプルの初期解析では、JAXAを通じて提供された5枚の試料皿の画像を数日で解析し、その結果約3万個の粒子を識別し、それらの粒径・形状分布を明らかにしました。(図6)。その解析速度と精度の高さはJAXAからも高く評価されています。

さらに、2026年打上げ予定の火星衛星探査計画MMXミッションでも本アルゴリズムの活用が予定されており、現在その準備が進行中です。米国や欧州の研究機関からの導入希望も相次いでおり、本アルゴリズムは国際的にも注目を集めています。

そして本アルゴリズムの真価は、地球上の利用でも一切損なわれることがありません。2022年、私たちは富士山宝永火口にて実証実験を実施し、ドローンを用いて約1.1平方キロメートルに及ぶ範囲を撮像し、800万個以上の岩石粒子を自動識別しました(図7)。

その結果、粒度や粒子形状の分布に加え、落石の発生源・軌道・移動量を明らかにすることができました。これにより、落石現象の物理的な理解を深まったと同時に、地球上の岩石であっても全く問題なく本アルゴリズムが利用可能であることが示されました。

宇宙でも地上でも、同一のアルゴリズムが高精度で動作する。これこそが本技術の最大の強みです。

図6. 小惑星ベヌーからの帰還サンプルを解析した例。簡単に5皿分の解析を完了することができた。
図7. 富士山宝永火口での解析例。約6000枚を徹底的に、迅速に解析し、領域内に存在する数m以上の全粒子を識別した。

関連リンク

・東京大学大学院工学系研究科プレスリリース

AI技術で小惑星の全ての土砂を高速自動計測 ―鉱山、土木、建設、防災へ応用可能―

https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2025-04-08-001

・日本経済新聞 (2025/4/7)

東大、AI(深層学習)を活用し大量の岩石を高速かつ高精度に自動識別する実用的なアルゴリズムを確立

https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP689357_U5A400C2000000/

・日本経済新聞 (2025/4/23)

20万個の岩石を高速解析 東大、小惑星の形成過程の解明や落石防止に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG093PA0Z00C25A4000000/

・時事通信 (2025/4/8)

小惑星上の岩、AIで高速識別 土木、防災などに応用も―東大

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025040700848&g=soc

・共同通信 (2025/5/3)

小惑星の岩石、AIで識別 探査地探し迅速化に期待

https://nordot.app/1291299210571629540?c=110564226228225532